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マイスター眼鏡院

〒107-0061 東京都港区北青山2-12-27
TEL.03-6804-1699
OPEN 11:00-20:00
定休日 第3月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
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~ドイツ国家公認「眼鏡マイスター」への挑戦~
日本には「眼鏡士」という国家資格がない。

日本で眼鏡を作る場合、お客様の視力を測るのに「資格は必要ない」ということをご存知だろうか。 そのことに大きな疑問を抱いた兄弟がいる。赤穂市初の眼鏡専門店を開業した「18Kなかにし」社長・中西一郎氏の長男・謙太氏と次男・広樹氏だ。 “本物の眼鏡士”=「ドイツ国家公認眼鏡マイスター」という目標に向かって、彼らは単独でドイツへ渡った。 眼鏡マイスターとはどんな資格なのか? それが眼鏡使用者へどんな良いことをもたらすのか? そこには、プロ中のプロと賞賛される「本物の眼鏡士」の姿があった。
(取材:フリーライター 辻 瑞恵)

本物の眼鏡士になるためにはドイツの国家資格しかない

プロの眼鏡士の資格を取るためにドイツへ。しかも取得までに約9年もかかるという、ドイツ人でも難関といわれる「ドイツ国家公認眼鏡マイスター(以下:眼鏡マイスター)」の資格をなぜ取得しようと思ったのか。「残念ながら日本には国が認めた眼鏡士資格は存在せず、専門学校や団体等で認定されたものしかありません。それでは本当の眼鏡店としてお客様の健康に直接関わる眼鏡をお作りさせて頂くには不十分だと判断したからです」。こう話すのは弟の広樹氏。「そこでどうすれば本物の眼鏡士になれるのかを調べました。アメリカには“オプトメトリスト”という資格はありますが、こちらは医学に重点を置いておりドクターと呼ばれています。一方、ドイツの“眼鏡マイスター”は国家公認の資格で眼鏡士の視点に立った技術はもちろん、健康面や細かな生活上の問題等も考慮して眼鏡を作ることから、『これだ!』と確信。マイスターという称号は日本ではあまり知られていませんが、ドイツでは13世紀から続く国家公認の伝統制度。その資格がないと自分のお店をもつことができないほど権威のある称号で、プロ中のプロとしてドイツ社会では信頼の証とされています。その中でも私どもが目指す眼鏡マイスターは、“健康に直接関わる職”であることから勉強も広範囲にわたり試験も厳しく、行く前から資格取得は非常に困難だと聞かされていました。でも、迷いはありませんでした。兄も私も『本物のプロの眼鏡士になりたい!』──その一心でドイツでの眼鏡マイスターの道を選びました」。

ドイツ語、就労ビザという 大きな壁・・・1%の可能性に望みを託して

しかしその道はけっして平坦なものではなかった。「まずは何といっても言葉の問題です」と兄の謙太氏は話す。最初はドイツ語がまったく聞き取れず言葉も通じなかったため、語学学校に入り1年間はとにかくドイツ語漬けの毎日だったという。 「さらに困難だったのが、就労ビザでした。なぜならドイツの職人養成学校や眼鏡マイスターアカデミー(以下:マイスターアカデミー)はすべて州立(日本でいえば国立)で、まず職業訓練生 (見習い)として就職しないと最初の段階の職人養成学校への入学資格が得られないのです。外国人の私は就労ビザがないと就職できない。しかし就職先がないとビザは出ない。まさに負のスパイラルでした」。 広樹氏も「当時のドイツは就職難で失業率も高く、そこに日本人でドイツ語も何とか話せる程度の私を雇ってもらえる確立は1%と言われていました。あの語学力で私を雇ってくれたオーナーに感謝しています」と振り返る。しかしその1年後には言葉の壁もなくなり、現地の人から「ドイツ生まれ?」と言われるまでになったというから驚く。さらに職場では、多くのドイツ人客から指名を受け異例のスピードで売り場責任者に昇格。ドイツ人スタッフからも仕事の相談を受けるなど、信頼を寄せられるまでの存在になったという。

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国家資格取得を目指し全力疾走での9年間

ドイツ語、就労ビザ・・・しかしそれ以上に大変だったのが、眼鏡マイスターの資格取得までの道のり。それは長く厳しいものだっだ。 「就職先が決まると就職先から職人養成学校へ派遣され、まず2週間学校で理論と一般教養等を学び、次の3週間は学んだ事を勤務先で実践します。授業では解剖学がとくに難しく、ドイツ語の医学用語に加えラテン語も覚えないといけません。そのため復習、予習は欠かさず寝る間も惜しんで勉強しました。それを3年間繰り返し、3年後にようやく1回目の国家試験にあたる職人試験(実技を含む)を受けることができます。毎日が試練でしたね」と“アウゲンオプティカー(眼鏡技士)”になるまでの流れを、こう説明する広樹氏。試練は学校だけではなかった。「職場でも・・・」と今度は謙太氏が振り返る。「外国人ということもあり、他の誰よりもできるということを証明しなければ認められないような状況もありました。そのため例えば技術なら『今までそんな人はみたことない』と驚かれるくらいまで練習しましたね」。その練習量は、通常3年かけて学ぶすべての技術を約1年で習得したというから、人の3倍、いやそれ以上だったに違いない。

心理学、薬学、解剖学、経営者としての勉強も

こうした努力の結果、2人は1回目の国家試験となる職人試験に合格。眼鏡技士として認められ、ここで初めて一人前の給与がもらえるようになったそうだが、実はこれはまだ準備期間。ここからさらに1年から2年、眼鏡技士として経験を積み、ようやくマイスターアカデミーへの入学資格が得られるというから、その道のりの長さは想像以上だ。しかも入学審査に合格しマイスターアカデミーに入学できても最初の半年間はお試し期間で、全16科目中2科目単位を落とすと強制退学させらるという。「脱落者も多く、ここでも猛勉強の毎日でした」と話す広樹氏。マイスターアカデミーの授業は専門分野の博士らにより、眼鏡や眼だけでなく、心理学、薬学、一般教養、スポーツ光学も学ぶ。解剖学では眼、脳、心臓、遺伝子にまで及び、さらに教育学、経営・法律と広範囲にわたる。なぜ教育学や経営・法律まで学ぶのか。広樹氏はこう話す。「マイスターは職人としての知識・技術だけでなく、経営者となる素養や後継者を育てる義務も求められます。そのために必要な知識を磨けたことは大変よかったと思っています」。 入学から2年後に最後の難関である国家試験が待っている。ここで最終国家試験すべてに合格した者だけが、念願の「ドイツ国家公認眼鏡マイスター」の称号を手に入れることができるというわけだ。「この試験は、2度失敗すると一生受験資格を失うという大変難しい試験でした。しかし勉強の大変さより、今きちんと学べていること、プロへの階段を着実に上っているんだと思うと嬉しい気持ちの方が大きかったですね」と目を輝かせる謙太氏。兄同様、優秀な成績でマイスター試験に合格できた広樹氏も「1度もしんどいと思ったことはありません。何がなんでも国家資格を取得するんだという強い思いがあったおかげで、ブレることなく最後まで全力疾走できました」と胸を張る。

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日本での取得者は5人そのうち3人が私たち

こうして兄は2009年、弟は2013年にドイツ国家公認眼鏡マイスターを取得。現在日本でその資格を有しているのは、謙太氏と広樹氏、それに結婚を機に来日した広樹氏の妻・ステファニー氏の3人を含め5人だけ。日本人で兄弟での取得はもちろん初めてだ。 しかし2人にとって帰国してからが本当のスタート。マイスターアカデミーで学んだ多くのことを今度はお客様に還元していく。それこそが彼らの一番の目的であり使命なのだ。果たして2人が眼鏡マイスターで修得したものとは?それはお客様にとってどんな良いことをもたらせてくれるのだろうか?

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“眼”を通して“脳”の状態をみる

それについて謙太氏は、「学術的に裏打ちされた高い知識、高度な技を修得することができました。なかでもハーゼ博士が打ち立てた『ハーゼ理論』に基づく両眼視機能検査は、その最たるものだと思います。簡単にお話しますと眼鏡の度数をお測りすることはもちろん“眼”を通して視機能をつかさどる部分の“脳”の状態をみるというものです。この理論に基づきお作りした眼鏡で、例えばひどい肩こり、頭痛、眼精疲労などの大幅な改善や、集中力、学力や立体視力の向上といった効果が期待できます。もちろんすべての方に必ず効果が出るわけではありませんが、多くの方が改善されているのも事実です。日本にもハーゼ理論の測定方法を試みている眼鏡店はありますが、ハーゼ理論を完全に理解し、実践できるのは日本に5人だけ。そのうち3人が私たちというわけです」。その実例を広樹氏が話してくれた。「先日も、大型・中型免許取得の際の深視力検査で『これまでどこで眼鏡を作ってもダメだった』というお客様がご来店になり、ハーゼ理論に基づいて両眼視機能測定を行ないました。視力のバランス、視線の向き、遠近感等のチェックと矯正を行い、眼鏡を作らさせていただきました」。もちろんそのお客様は深視力検査に無事合格したそうだ。

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高い知識と高度な技術、豊富な経験が大きな強み

視力測定も通常の眼鏡店の検査とは違う。お客様に本当にあった眼鏡を作るため、視力測定やフィッティングにかなりの時間を費やすという。「まず測定前に眼球(眼自体の)機能が正常に働いているか瞳孔のリアクションを含め様々なチェックから始めます。視力測定ではお客様の体調、職場環境、服用されているお薬等をお聞きし、あらゆる角度から視力への影響を考慮しながら最適な眼鏡度数を測定します。度数が決まったらフレームとレンズ選びです。お一人お一人の使用環境に応じた商品選びはもちろん、多様化する商品情報をわかりやすくご提供するよう心がけています。また一般的な眼鏡のかけ具合調整ではなく、骨格に基づく手法で行います。例えば・・・」と広樹氏が取り出したのが、長さ7㎝ほどのペンライト。眼鏡のフィッテイングの際に光をあて鼻にできる皺や耳との隙間を見るのだという。「負荷がかかると鼻に皺が出ますので、その皺が出ないよう調節します。顔には多くの神経があり、フィッティング技術が悪いと頭痛などを引き起こしてしまうこともあります。また日本人の場合ほとんどが眼鏡が鼻からずれていますが、これも改善することができます」。 眼鏡による小さな皺、隙間も見逃さず、脳との関連性や健康面、ライフスタイルまで考慮しながらベターではなく“ベストの眼鏡”を作成していく。眼鏡店はたくさんあるが、ここまできめ細かく慎重に仕事をしてくれるところは確かに出会ったことがない。この知識・技術こそが2人がドイツで9年間かけて手に入れた“財産”なのだろう。

欧州を中心に世界で活躍する人たちと一緒に

そしてもう一つ、“人脈”も「大きな財産になっている」と広樹氏は話す。「ドイツ時代の職場の同僚や学校の友達はもちろんのこと、数多くの欧州アイウエアデザイナーと出会えました。また、レンズメーカーやフレーム会社のトップの方たちとも親しくさせてもらっています。彼らと一緒にチームを組んでベストの眼鏡を作っていければ最高ですね」と笑みをこぼす。取材の最後に2人はこう結んだ。「私共は“高い知識”“高度な技術”を持ち合わせている日本でも数少ない眼鏡士であると思っています。また9年もの長きに渡り、数多くのお客様の“眼”に携わってきた“豊富な経験”も大きな強みだと考えています。ぜひ眼や眼鏡に関するお悩みやご不満、ご質問等をお持ちの方がおられましたら、一度私どもにご相談いただければと思います」。